えのぐ日記

小学校で図画工作専科の教諭をしています。

平面の研修案

地域の研修では平面グループに所属することになり、6月あたりから研修の計画を立てていた。

以前書いたように、私は「平面」「立体」という分け方に違和感を感じており、平面とは何か、平面という領域の可能性とは何かと考えていた。

そして、平面の研修をするなかで、どういった内容が時間をかけてするにふさわしいのか、ということを考えた。この世の中で、平面の領域に含まれる作品には、どんなものがあるのか。果たして平面とは。考えれば考えるほどに、すべてのものが立体に思えてきたが、あえて、「タブロー」で考えることに徹した。タブローも突き詰めれば立体なのだが、定義づけとして、平面として見せる作品や素材のことを「平面」または「タブロー」と指すことにした。

その中で自分が「平面(=タブロー)」について研修をしたいと考えたことを以下に挙げる。

 

①写真の現像

 写真は平面として見せられる現在唯一といってもいいメディアなのではないか。さらに言うと最近の写真はデータとして見ることのほうが多い。パソコンやスマホで見るデータとしての視覚情報は平面として考えられるのではないか。だが、それをあえてデータとして処理するのではなく、感光紙に現像し、定着させるという方法をとることで、平面の質感(これを言っている時点で立体造形的な考え方だが)を感じる研修はおもしろいのではないかと考えた。

 

②モーションタイポグラフィ

 これは平面として紹介してもいいと思う。文字が動く、映像表現の一種で、以下に挙げたような作品例がある。

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上二つは完全にパソコン操作のみによって作られたものだが、以下の二つは実際に質感のあるものを操作して、撮影して文字を動かしている。

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以下の展覧会のタイトルムービーは、「デザインあ」のメンバーによるもので、非常に遊び心をくすぐられるし、見ていて楽しい、わくわくする、ということが率直な感想。リンクではそこまで見られないけど、実際はもっとバリエーションがある。

www.2121designsigh

 映像も写真もだが、実際に手に取って質感を感じ取れるものをあえて平面に定着させたり、データとして処理して動くものとしてある一定の窓枠から見せたり、あえて立体を平面にしているというところがミソ。

 

③デザインの解剖

 これは授業でやろうと思っていることで、『デザインの解剖』という展覧会を参考に考えている最中。定義として、デザインの解剖とは、①身近なものを②デザインの視点で③外側から内側に向かって④細かく分析することで⑤ものを通して世界を見る⑥プロジェクトです。だそうだ。子どもにとって、言葉で理解することが難しいだろうと予想するのは②デザインの視点で③外側から内側に向かって、というところだろうか。一緒にチラシや牛乳パックを解剖していくことで、「デザインの視点」が見えてきたら目標達成か。これは立体物のデザインも含まれるので、平面からはかけ離れていく可能性もある。だが、パッケージデザインということに絞ると何とか平面として考えられるのではないかと思い提案した。

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④絵の具工場見学、絵の具づくり

 平面を作るときの作者の行為、素材とのかかわりに注目すべきだと考える私は、平面作品を作るうえで歴史のある絵の具に着目した。教育学者であり神智学者のシュタイナーによると、色彩とは、物質に定着するが、それ自体は質量をもたない、漂うものだ、ということらしい。となると色彩こそが、平面を考えるにふさわしい題材なのではないかと考えた。なぜなら色彩こそが、2次的空間で漂い、網膜が色彩を捉える機能によって奥行きはあるかもしれないが、質量がないものであり、色彩について考えることは、色彩が定着させられた平面ではなく、平面そのものを考えることができる題材なのではないかと考えたからだ。そして、色彩を用いる時に使うもの、それが絵の具であることから、絵の具について学ぶことは平面について学ぶことになるのではないか、と考えた。

 

若干無理やりではあるが、このようにして、平面として考えられることを何個か考えた。(実際はもう8個くらいあるが、よくよく考えたら平面というには程遠かったので書かなかった。)

グループで提案したところ、(私以外の人の提案としては、美術館で作品を鑑賞する、というような意見があり、それは「鑑賞」だろ、と思ったし(言ってないがほかの人が言って却下された)、折り紙を切り平面構成をするという案があり、それはおもしろいと思ったし平面だと思ったが、授業化するにあたって子どもが難しいだろうという話になり却下され、そこで私が四つ意見を言うのも憚られたため、一番食いつきがよさそうな④のみを提案したのだが、)紆余曲折あり、④絵の具工場見学、絵の具づくりをすることになった。実際にどんな様子だったのか、あと、平面という領域についての私自身の考え方の変化も含め、この続きはまた後日書こうと思う。